俺が馬鹿だった

何祭りのバイトなんかやってんだよ。
大体、テント設営とかじゃなくて普通に売り子じゃねーか。
接客なんかやった事ねーっつーの。
とりあえずよく通る道にある八百屋のマネをして
「いらっしゃいませぇぇえええどうぞぉぉぉおおほほぉぉおおおお!」
とかほざいてみる事に。
これが祭りの雰囲気にぴったり合ってるのでこの掛け声で行く事に決定。
やってくうちに徐々に慣れてきて声の出し方がよくなってきた。
そのせいかわからんけど、雇い主の屋台のオヤジから
「兄ちゃん普段何やってんだい?」
とか聞かれたので、どうせ一日だけしかやんねぇしってんで
「実家の手伝いっスね。実家八百屋なんスよ」
なんてどうしようもない嘘をついてみたが
「やっぱりなぁ。どうりでいい声してるワケだ」
などとすっかりオヤジも騙されてたので、どうやら俺は大分いい声出してたらしい。
で、そんな即席八百屋の俺が売るのは野菜じゃなくてカキ氷とジュースとビールだった。
ジュースは渡すだけだから簡単だけど、カキ氷とビールは少しコツが必要だね。
屋台のビールはなるべく泡を立てないようにしないといけないっつー炭酸飲料として矛盾した掟があるんよ。
まぁそれでもコップを横にしてなるべく泡出ないように頑張ったけど、一回変なオッサンが
「泡だらけじゃねぇか」
とか文句言ってきたから、笑顔で謝ってなんとかやりすごした。
ムカつくので当然サービスとかしませんよ。
カキ氷は一番手間がかかるけど、面白かったね。
最初は氷の入れ具合がよくわからなくてやたら割高なカキ氷を量産してたけど、少ししたらわかった。
カキ氷ってシロップかけるから溶けて小さくなんだよね。
だから、初めの氷を多めに入れて手で押さえて少し固めると程よいのができるってワケよ。
それがわかってからは楽しい楽しい。
シロップのかけ方はわかんなかったから、適当にいつもお好み焼き喰う時にやる、細い切り口のマヨネーズを手首のスナップきかせて細かくまんべんなくかけてくってのやっといた。
そしたらそういうのが功を奏したらしく、来る客来る客に喜ばれるんよ。
そりゃこっちも嬉しくなってきて盛り方もすごくなってくるって。
別に俺は儲けとか関係ないからそんなの度外視で盛っときました。
シロップも白い部分が見えなくなるぐらいまんべんなくかけといてやりました。
でも、来る客によって盛り方とか変えてたのは内緒です。
すんません、うざいカップルは普通よりやや少ないぐらいにしてました。
逆に中学生の初々しいカップルが来て男が女に買ってあげてるような時は、特盛りツユダクにして気の利く優しいお兄さんを気取って悦に入ってました。
てか、うざカップル以外は大体みんな特盛りだったね。
おばちゃんとかもすげー喜んでくれるんだもん、そりゃ盛るさ。
やっぱ目の前で喜ばれると楽しいね。
こういう売り子ならまたやってみたいなって思った。
けど、なんで今日のタイトルがこんななのか。
それはね、僕がね、馬鹿みたいな期待をしてたからなんだね。
だってさ、バイトの募集のメールにはさ、「男女問わず募集」とか書いてあるからさ、そりゃ期待もするってもんだわさ。
でもよ、まさかよ、バイトで来た女がよ、間違いなく俺より腕が太いであろうビヤ樽だとは夢にも思わねぇよ。
なんかさっきから文節の区切り方みたいな文章になってるけど、気にしないで。
てかさ、気合い入れていつもはバイトにしていかないコンタクトしてって、ちゃんとヒゲも整えていった俺の立場はどうなるんだよ?
立場っつーか労力か。
肉体的には楽だったけど、精神的にはきつかった。
俺が行ったのは朝霞市の彩夏祭ってやつで、よさこい踊りの大会やってたんだけど、それの出場者に結構Bガールとかギャルっぽいのがいるのよ、なんでか知らんけど。
俺の楽しみっつったらそういうのを凝視するぐらいだったね。
接客の時に凝視しすぎちゃって目合って微笑まれた時なんか、公衆便所連れ込んで何かしでかしてやろうかと思ったし。
まぁ思っただけで実際は笑顔で接客なんですけどね。
とりあえず、祭りのバイトは楽しいけど精神的にきついって事がわかった。


やっぱり祭りは行く方が楽しいよ、誰かとさ。


まぁ行く相手いないんだけどさ。




だから募集。          切実に