玉砕のお話〜完結編〜

引っ張ってすんません。
で、この前の続きなんだけど、なんで俺が先走った行動に出たかだよね。
その日は、俺とTの他に二人いて、四人で飯食って話してたんよ。
十二時過ぎだったかな。
他の二人が眠いとか仕事があるとかで、帰るって言い出したのね。
しょうがないから二人をそれぞれ送る事になったワケですよ。
この時はTも帰るんだろうなーとか思ってたんだけど、二人目の子と別れる時に、二人目の子が言い出したのね。
「Tはこのままライト(俺のアダ名)とドライブするんでしょ?w」って。
そんなワケねぇだろっつーの。今までの経験からいって間違いなく帰るよとか思ってたら、
「そうだねー。明日仕事あるけど、眠れないからそうしよっかな」
的な事をほざくんですよ。
我が耳を疑いましたよ。マジですかと。
いつもはみんなが帰りだすと自分も帰るじゃん。
つーか、昔は俺と二人きりだと気まずいとか俺がいる前で言ってたでしょと。
ぶっちゃけその子も冗談で言っただけなんだけど、Tは普通に俺とドライブする気らしかった。
気がつくと今までその子が座ってた助手席にTが座ってるし。
その子は唖然としつつ帰っていき、俺も唖然としつつとりあえずまた車走らせましたよ。
一体どういう風の吹き回しなのかなぁとか思って横目でチラッと見てたら、
「ライトは明日平気なの?」
とか聞いてきた。
平気も何も、その時は丁度学祭の時期で、学校は連休中だったから、もちろん大丈夫でしたよ。
その旨を伝えるとTは
「ふーん、じゃあ今日は大丈夫なんだ」
とか意味ありげな発言したんです。
ここまで読んだ男に訊きたい。
こういう状況になったら、ちょっと勘違いしてもしょうがないっしょ?
まぁ、つってもこれぐらいじゃそこまで先走りませんよ。
それからは何故か所沢周辺のラブホ巡り(巡るだけ。入らない)してました。
で、気がついたらいつの間にか三時過ぎ。
車内の話もいつの間にか普段あまりしない恋愛話になってました。
しかも俺に誰か好きな人はいるのかとかいう、あまりにも直球すぎるお話。
当然俺は慌てて話を逸らそうとしますよ。
「俺にそんな話してほしいんだったら、Tもそれ相応の話聞かせてくれよ」
とか言ったのが間違いだった。間違いじゃないかもしれないけど、言わなきゃよかった。
すると、Tはしばらく思いつめた表情で黙っていたが、やがて意を決したように重い口を開いた。
「あのさ…実は最近まずい事があったんだよね…」
「まずい事って何よ?俺でよければ話聞くけど…」
それからまたしばらくの沈黙。外の雨の音だけが車内に響き渡ってました。
「バイト先の課長と行っちゃった…ラブホ…」
「は?何それ?なんで?だっておまえまだアレじゃなかったっけ?」
「さっきさ、ラブホ巡りしたじゃん?あの中に行ったとこがあるんだ」
「そうなんだ…。てか、質問の答えになってないから」
その後の会話は本当によく覚えていません。
ただ、話の内容を総合すると、Tはバイト先の係長と課長と飲んでいて、係長が帰って二人だけになり、どこも行くとこないしどこ行くって話の流れでラブホに行ったとか。
なんだそりゃ?って話なんですが、本人曰く別に最後までしてないとかいうワケのわからない話。
それで「どうしたらいいかな?」って聞かれたんで、もちろんやめとけって忠告しましたよ。
別に自分が好きな女だからとかいう理由だけじゃなくて、友達としても止めました。
向こうは妻子持ちなんだから、どう考えても遊ばれて終わるのがオチだし、そもそも向こうの家庭もブチ壊す事になるからね。
そんなごく当たり前の事をわざわざ俺に確認する時点でちょっと怪しかったんですが、聞いてみたんですよ、Tは課長の事どう思ってるのかって。
そしたら
「わかんない。バイト先で優しくしてくれたのってあの人だけだったんだよね…」
だって。アホかと。そんなん下心があれば男は優しくなる生き物なんだよと。
このTっていうのは別に取り立てて不細工とかいうワケじゃないんだけど、警戒心が強すぎて今までまともに男と付き合った事なかったのよ。
だから俺もじっくりコトコト煮込んでたワケなんだけど、横からこんな泥棒猫みたいのが現れたら、そりゃこっちも先走りたくもなるわと。
すごい色んな感情が入り混じりつつもTに5、6回「絶対やめろよ。いい事ないからな」と忠告してこの話は終了。
黙って信号待ちをしてると
「なんか話が重くなったし、さっきのライトの聞かせてよ」
とかほざいてきた。覚えてたんですね、しっかりと。
そこでまた言う言わねーで揉めましたよ。
結局5分ぐらいごちゃごちゃなって、しまいにゃ
「言わないといい加減怒るよ?」
とか言い出してきました。
俺としては怒った顔も見たかったんですが、そんな頭悪い事言うとホントに怒りそうなので黙っときました。
しょうがないので
「言っても驚かない?」
「驚かない」
「ホントに?」
「ホントに」
「そんな聞きたい?」
「しつこいよ!」
とかいう掛け合いの末、
「今助手席に乗ってる人だよ」
っていう決定的な事を言っちゃいました。
当然Tはたっぷり10秒ぐらい沈黙です。
「やっぱ驚いたっしょ?」
「いや、そんな冗談いいから…」
「バカヤロー。こんな状況でそんな冗談言えるか」
「マジすか?」
「マジすよ」
「マジすか…」
なんかもう失敗した感すごい漂ってるけど、ここまできたら行くしかねぇなと思い、聞きましたよ。
「で、返事はどうよ?」
「やっぱしないと駄目だよね…」
「そうだね。やっぱはっきりしてもらわないと」
「今はまだまとまらないから、また今度返事するのでいい?」
こうやって違う日にする時点でアウトですよね。
よければその場でOK出すもん、普通さ。
ここで九分方結果はわかったけど、
「あぁ…じゃあまた今度でいいや」
って言っちゃうのが俺の駄目なところ。
結局この後予想通りに玉砕したとさ。
でも、このお話には後日談があるんだよねー。
それはまた今度書くとします。
あぁ、今日は色々疲れた。とりあえずこれで俺の玉砕話はおしまいです。
こういうのを文章にするって難しいですね。